「怒鳴る」ことによる弊害

バレーボールの元日本代表として活躍した益子直美さんが

「絶対に怒ってはいけないバレーボール大会、益子直美カップ」

というユニークな大会を主催されていることを知っていますか?

文字通り、この大会では指導者は選手を怒ってはいけません。

でもついいつもの癖で

「こらあ!何やってんだ!」

「そこは違うだろ!」

などの言葉が指導者の口から出てしまうんですね。

そうすると、益子さんが

「監督、今怒りましたね」

と声をかけて、バッテンのついたマスクをかけさせられるという。

友人がこの大会を見学しましたが、

この日は子供達がいつもよりのびのびとプレーしていてとても面白かったと言っていました。

 

益子さんがこの大会を主催されるようになったきっかけは、

選手時代に自身が指導者から受けた暴言に辛い思いをしてきたからなのだそうです。

先日、テレビでも紹介されていました。

その番組の中で「選手時代、ただの一度もバレーを楽しいと思ったことがない」

とコメントされていたのには、さすがに驚きました。

ジュニア時代からエースとして活躍し、日本代表選手にも選ばれていた益子さんが

ただの一度もバレーを楽しいと思ったことがないなんて。

 

でも実は、こんな思いをしている選手は他にもたくさんいるのです。

私の知り合いにも高校時代全国大会3位にまでなったのに、

「もう2度とテニスはしたくない」

と言ってその後1度もラケットを握っていない人がいます。

その人が通っていた高校はテニスの強豪校。

監督の暴力、暴言は有名でした。

しかし、全国大会でも常に上位にいたので、そのやり方が強くなるためには必要だという思い違いが多くの人たちにありました。

時代は昭和のスポ根(スポーツ根性)アニメ全盛期。

『巨人の星』『アタックナンバーワン』『エースを狙え』などなど・・・

監督・コーチのいわゆる「しごき」「暴言」は当たり前。

そういうやり方で強くなっていったチームがたくさんあったために

それが成功例となって、みんなが真似をするようなっていました。

しかし、そんな中で傷ついたり離れていった選手もたくさんいたのです。

自殺した選手もいました。

 

昭和・平成と続いてきた体罰や暴言による指導のあり方が、

近年になってようやく見直されるようになってきました。

体罰や怒鳴ることで選手が強くなったとしても、

その競技が嫌いになったり、苦い思い出だけが残ってしまっては本末転倒ですよね。

怒鳴られると人は畏縮します。

畏縮すると思考が停止し、指導者の顔色を伺うようになります。

そうすると、自分の考えではなく、指導者の言う通りに行動します。

自主性は育ちにくくなりますよね。

小さい頃から体罰を受けたり怒鳴られて育った子は、脳の萎縮や変形が見られることもわかっています。

自己肯定感が低く、消極的な性格になりやすいなどの報告もあります。

「怒鳴る」ことの弊害は様々な形で現れるのです。